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index≫銀輪旅日記
 

⑧ 自転車で切る風に、寒さのかけらもなくなる五月は、白い十字の花をつけたミカン畑の中を走りたくなる。
 生口島の南海岸は、磯づたいに歩く道だったという。そこに立派な本堂の御寺がある。海が正面で、すぐ裏は急傾斜の尾根。広い境内に風が吹き抜ける。軒先には「ご自由に」と山盛りのミカンだ。
 海へ向かう参道の途中で西に入る。細い道がミカン畑を縫う。海と山に囲まれ田んぼもないここに、大きな寺と手入れされた庭や畑が広がる。寺には忍性や法然といった、貧者の救済に尽くした高僧の足跡や伝承が残る。
 「ご自由に」との気持ちの温かさと、さりげなく手入れが行き届いた景色にうれしくなる。渦になり自転車を包むミカンの香り。それがより濃くなるようだ。民家の黒い瓦にも、暗緑色のミカンの木にも陽光が差し込み、小さな十字の花びらと合唱する。ミカンの花咲く丘だ。
 ミカン畑の道をもっと走ろうと、多々羅大橋を渡り、大三島のサイクリングロードから尾根の上りに取りつく。温泉施設前を過ぎ、北上し集落を抜ける。尾根を越すと景色が一気に広がる。一面のミカンの花と海原。ミカンの香りに染まった。薄くなった頭には十分すぎる整髪料だ。
 盛集落の四つ角を右へ海へ下る。フェリー乗り場。海側の畑のそばには小さな豆腐屋。鍋を抱え、お使いに行ったあのころを思い出す。フェリーの待ち時間は、豆腐とビールに決まっている。

(広島県自転車競技連盟前理事長・サイクルフォーラム代表=広島市)
 
 
 
 
 
   御寺  
   
 多々羅大橋へ  大三島のみかん畑
   豆腐売ってます
   
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