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④ 中国山地では昔、十万人以上が製鉄に従事していたという。炭焼きやかじ屋といった仕事のほか、山を崩し、水を流して砂鉄を採取するカンナ流し、その材料や製品の運搬が行われた。形跡は留めていないが、カンナ流しの後の地形は残る。
 浜田市の大麻山周辺はカンナ流しが盛んだった場所。集落の谷間は棚田で埋め尽くされ、その間に樹木で覆われた小山が点在する。枯れ山水の白砂に配置された岩のようだ。谷間と山の境界線になる尾根の中腹に、一本だけの大樹。残されたのか、植えられたのか、独立してある。
 大麻山北の山すその横山。吹き込む冷たい風の中、尾根を見上げると、薄いえんじ色の若葉の上に白い花をちりばめたヒガンザクラの大樹があった。枯れ山水の庭園が彩りを持ち始めた最初の季節、その主人公として出現していた。
 サクラの大樹への急坂に自転車を向けた。空いっぱいに広げた枝の小さな花びら。孤高の桜への畏敬いけいに、春の到来を告げてくれたことへの感謝の気持ちが加わった。ハンドルをにぎる手袋の中が、汗でぬれていた。
 眼下に広がるカンナ流しの跡。地形を変えるほどの自然破壊だったのだろう。谷の傾斜を、等高線のように、くっきりと石垣が切り取っている。どれ ほどの自然が流されたのか、想像もつかない。サクラの根元に小さな祠ほこらがある。桜が神なのか、それとも、傷つけた自然への手向けなのか。

(広島県自転車競技連盟前理事長・サイクルフォーラム代表=広島市)
 
 
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  3月11日の大麻さくらです。 
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